2011年04月01日
息子と最後の…

バスケのブログですが、本職(笑)は柔道です。
主に小学生に柔道を教えています。
高校卒業とともに滋賀を離れましたが、8年前に20数年ぶりに実家に戻ってきました。
息子が小学1年生に上がったのを機に、親子で地元の道場の門を叩きました。
自分が中学生に入った頃に指導を受けた先生方が、まだ元気に指導されており、歓迎してもらいました。
1年生の頃は、柔道というより、体操教室。でんぐり返りやいろんな基礎運動はそれなりに楽しかったと思います。
それに、ほとんど家に居ない親父と時間を共有するのも悪くなかったんだろうと思います。
親父である私は、自分が小学生から続けてきて、今の自分を作ってくれた柔道を息子が始めてくれたことが、嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。
どんなに忙しくても、たとえ徹夜で仕事をしてても、必ず一旦家に帰り、一緒に道場に向かいました。
しかし、息子は運動が大の苦手。
学年が上がるにつれて、
自分は運動が苦手であること、
体が硬いこと、
体は大きいのに凄く力が弱いことなどを、
あいつは十分に認識し始めたと思います。
それに、同級生と練習して、投げられっぱなしの状態では、楽しいはずもない。
柔道を好きになることは難しかったでしょうね。
毎週、嫌々道場に来てることも十分感じ取れました。
いつ、辞めると言い出すか、時間の問題のように思えてきました。
しかし、あいつは辞めるとは言わなかった。
入門して2,3カ月の小さい子ができることが、上級生になってもろくにできなくても、辞めるとは言わなかった。
稽古中に頭を打って、痛くて辛くて、ボロボロ涙を流しても辞めるとは言わなかった。
厳しい先生に怒鳴られても、辞めるとは言わなかった。
たくさんいた同級生が辞めていっても、
ずっと後から入門してきた、小さい下級生にボコボコに投げられても辞めるとは言わなかった。
柔道着が汗で雑巾のようになる日も、
畳が冷たくて、足をつけるのが嫌な日も、
あいつは柔道バカの親と道場に通い続けました。
4年生の春。
写真では、技をかけてるけど、同級生に女の子に負けた試合です。
あっという間に時間が流れて6年生。
身長がグングンと伸びてきました。
その間も、たまに出る試合は連戦連敗。
いや、試合どころか、相変わらず不器用なあいつは、帯も上手に締められない。
6年生の秋、道場内で試合がありました。
2試合が同時に進行し、私が審判をしている間に、あいつはもう一つの試合場で試合をしていました。
帰りの車中、結果を自分から語らないあいつ。
きっと負けたに違いないと思いながら、聞いてみると、これまでよく投げられている下級生を投げて下し、力の強い同級生とは引き分けだったと…。
6年生になって、少しずつ不愛想になってきた息子の横顔は、ほんの少し誇らしげでした。
あいつが進学する地元の中学校には柔道部がありません。
3月26日が、あいつの柔道着を着る最後の日でした。
普段、私は低学年の指導を担当していますが、この日は職権乱用し、高学年の練習に加わって、あいつの技を受けました。
久しぶりに組み合うと身体の成長を感じ取ることはできました。

しかし、技を受けると、なんとヘタレな技…
渾身の力を振り絞ってるらしいけど…
例え、一升酒飲んでフラついていても、これじゃあビクともせんわ。

それでも、夢のような、幸せな時間でした。
五体満足に大きく育ってくれた息子との柔道。
これまで練習してきた技をすべてかけさせて、まともに来た時には、大袈裟に大きく投げられてやりました。
ただし、投げられた数より、ひとつだけ多く、投げてやりました。
稽古が終わって、随分時間がたって一人になってから、この6年間のあいつの姿を思い出し、この日の事を思い浮かべ、胸が、目頭が熱くなってきました。
好きでもない柔道を6年間やり通したのは、
親父に言い出しにくかった事と、
やり始めたことを途中で辞めるのが嫌だったからだと思います。
息子よ、よく頑張った。
嫌々でも、
下手くそでも、
途中で辞めずにやり通したお前は、お父さんの誇りだ。
気持ちがあれば、柔道部があり、熱心な指導者がいる市内の学校(私の母校)で合同練習をすることはできます。
でも、きっともう柔道は続けないでしょう。
振り返れば、私も楽しいと思って柔道をしてきた訳じゃない。
小学校の頃は、試合に勝ったことなかったな。
靭帯を切ったり、骨折したり、脱臼したり、怪我もたくさんした。
先輩からいろんな目に合わされて辛いこともあった。
しかし、どれだけのことを柔道を通して体験し、得てきたことか。
息子よ、柔道でなくてもいい、何か一つ、決めた道を進んでおくれ。
きっと逞しく生きていくための糧になるから。
一つのことに打ち込むことは本当に素晴らしいものだよ。
奇しくもこの日、昨年受けた昇段審査が通り、五段の免状を
子供達の前で、師範からいただきました。
柔道の素晴らしさ、自分の息子には伝わらなかったかもしれませんが、
一人でも多くの子供に柔道の素晴らしさや面白さを伝えていくことが、
私の柔道への恩返しです。

左は4年生の頃、右はこの日の写真です。
小学校6年間で42cmの背が伸びて、青木康平選手よりも背が高くなりました。
身体だけでなく、すべての事において、はやくお父さんを追い抜いておくれ。
タグ :柔道
Posted by tomoyui at
20:08
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